「大学院における高度専門職業人養成について(中間報告)」に対する意見

平成14年6月25日
国立大学協会
第7常置委員会

 大学院において従来のような研究者養成だけでなく、高度専門職業人をより積極的に養成しようとする専門職大学院の構想そのものには基本的には賛成である。ただし、その構想の細部については、なおいくつかの疑問・質問などが出されている。そこで、さらに審議会において検討を深めていただくため、以下において、それらの諸点について述べることにする。

研究者養成との関係
 社会の実際の業務に役に立つ人材を養成するという趣旨はわかるが、それは理論がいらないということではないのではないか。すなわち、理論と実際、研究と実務家養成というのは密接不可分ではないかとも考えられる。その意味では、大学院を高度専門職業人という形での実務家養成に特化することに問題はないであろうか。逆にいえば、専門職大学院であっても、その中でやはり研究者養成を進める部分も必然的に伴うことになるのではないか。この点について今後より詳細にご検討いただきたい。

従来型の大学院と専門職大学院との併存
 また、ある研究科で研究者養成という従来型の大学院と専門職大学院とを併存させる場合に、統一的な教員組織の下で二つのコースを設定するということはできないのか。多くの大学にとって教育組織を分離することは教員の現在数からみてきわめて困難であることから言えば、この点はきわめて重要な課題だと思われる。なお、併存する場合、従来型の大学院の評価も併せて行うことが必要と考える。

博士課程との関係
 専門職大学院の修了者が博士課程に進むことができるのか、また、その場合に、修士から博士に進む場合と比較してとくに必要な条件が課せられるのか。
 また、区分制とは別にそれぞれ独立した形で専門職大学院の上に博士課程を置くということが認められるのかどうかについても、ご検討いただきたい。

実務・産業界などとの連携について
 このように実務に直結した高度職業人を養成するためには、大学院の教育内容に関する工夫だけでなく、それを受け入れる社会の体制、仕組みが不可欠である。法科大学院をはじめとしてこのような新しい大学院制度を導入する際には、法曹界だけでなく他の職業分野でも文字通り産官学が人材育成について連携をすべきであり、その仕組みがあってはじめて専門職大学院を設置する意義が活かされることになる。そこで、その仕組みをどのように構築するかという点についても、今後、検討し、提案されることを期待する。

高度専門職業人養成のための再教育の視点について
 法科大学院の構想を含めて、この専門職大学院の構想では、どちらかといえば一定の国家資格の取得あるいはその他の高度専門職業人の養成までの段階に力点が置かれている。しかし、今日のように社会変化の激しい時代にあっては、各種の職業に就いた後の再教育ないしは研修をこの大学院で行うという視点も必要ではないかと考える。したがって、今後、このような継続的専門教育の場としての大学院のあり方についての構想も検討し、ご提案いただきたい。

[要望先:中央教育審議会 大学分科会長]