平成12年度着手の大学評価に対する意見について

平成14年7月2日
国立大学協会会長
長 尾   真
同 第8常置委員会委員長
佐 々 木  毅

 貴信(評学機構評1第112号)において、平成12年度着手の大学評価について意見を徴せられました。これについては本協会は数度にわたって、貴機構に対して「申し入れ」を行っていますが、重ねて特に以下の点についてご高配をお願いいたします。

評価の理念、基本設計上の問題
 機構による評価の基本的な理念は、大学が自ら設定した目標の達成度の評価にあるものと考える。しかし機構の評価は、目標の設定自体について枠を設けており、結果として画一的、形式的な評価に傾きやすい。大学の多様性、自主性を活かす評価方法をさらに改善していただきたい。
 また分野別の教育、研究評価については、論文発表数など相対基準での評点を加える形での評価も行われているが、分野別に評価基準が異なるなど、その方法に問題があることが指摘されている。こうした点について方法的な検討を加えていただきたい。

実施上の問題点
 自己評価報告書の作成などにおいて、大学側の負担がきわめて重い。とくに小規模大学においては、人員上の制約が少なくなく、通常の業務に深刻な影響を与えかねない。大学における評価作業を軽減するような工夫をしていただきたい。
 特に全学テーマ別評価において、大学が厳しく自己評価し、問題点を指摘した場合には、それがそのまま、 機構の評価で問題点としてとりあげられ、低い評価につながった事例が少なからず報告されている。これは評価のゲーム化につながる恐れがある。
 他方でとくに専門分野別教育・研究評価では、評価員の、必ずしも専門領域の共通の了解ではない、独自の見解が評価結果に入っていると判断される場合もあった。こうした点で評価員の間での、評価についての共通理解の形成を十分に行っていただきたい。

手続き上の問題
 評価結果について、大学側が納得しないケースは少なくなかった。とくに分野別教育・研究評価ではほぼ半数が評価結果に対して「意見の申し立て」を行った。最終的に、全学テーマ別評価では全大学の1割強が、専門分野別教育評価(理学、医学)では対象機関の7−9割が、専門分野別研究評価(理学、医学)では対象機関の半数が、評価結果に納得しないままに、最終的な公表が行われることになった。評価の過程にさかのぼって評価の公正性について見直すとともに、「意見の申し立て」の制度自体も再検討をしていただきたい。
 また評価の理念を「大学がみずから設定した目標の達成度の評価」としながら、評価結果の公表においてその理念が一般の人達にも容易に理解されるようになっていなかった。そのため、本来そうした扱いになじまないにもかかわらず、公表された評価結果が恣意的に数値化され、それをもとに大学間のランキング表が作られ、これが新聞紙上などに掲載された事例が多く報告されている。こうしたことを念頭に、評価の理念をより明確に実現していくために公表の形態を改善していただきたい。

今回の試行についてのメタ評価
 機構による評価は「透明で進化するシステム」であることが必要である。以上に述べたように今回の試行には多大の努力を要したとともに、少なからぬ問題があった。また評価された大学だけでなく、評価にかかわった評価員の間でも様々な意見や批判があることは機構の「オーバビュー」でも述べられている。これは今回が、評価をする側にとっても、受ける側にとっても初めての経験であることを考えれば当然ともいえるが、その経験から十分に学ぶことが必要である。こうした観点から機構は、今回の試行について広く意見を求めるとともに、本格的なメタ評価を行い、その結果を基礎となる資料とともに公開していただきたい。

[要望先:大学評価・学位授与機構長]