提  言

1. 多様化する高校教育への対応

1.1  受験シフトに歯止めをかけ、高校が自らの教育目標を達成できるよう入試体制を整える。大学入試センター試験のア・ラ・カルト的科目利用はむしろ教育目標の達成を阻害する懸念があり、国立大学志願者については受験教科科目数の共通化を図る。
1.2  国立大学の入学選抜においては、大学入試センター試験を第1段階の、個別学力検査を第2段階の試験と位置づけ、両者を総合して、合否判定を行うものとする。なお、各大学の個別学力検査では学科試験だけにとらわれない多元的な評価の方法を導入する。

2. 大学入試センター試験の改善

2.1  大学入試センター試験を「選抜試験」として利用するうえで、公平性を欠くことのないように、利用実態に即して制度的な条件整備を行うことを大学入試センターに要望する。
2.2  国立大学志願者(一般選抜)については、原則として大学入試センター試験5教科7科目の受験を課す。
2.3  試験科目の選択が制限されぬように、また余裕をもって受験ができるように、大学入試センター試験の試験期間を1日延長して3日間とする。
2.4  確実な成績情報のもとで個別大学への出願が可能となるように、大学入試センター試験成績の事前通知の実現をめざす。
2.5  大学審議会の提案する大学入試センター試験の複数回実施は、資格試験的取り扱いが前提でなければ、単に競争が2回となるだけで、さらに熾烈な競争が生じ、試験の改善にはつながらない(参照、資料;大学審議会「大学入試の改善について」(中間まとめ)に対する意見)。また実施面からみても、問題の難易度調整等について、現状では解決の困難な課題が山積している。そのため、現行制度の枠内において、「やり直し」への配慮を講じるとすれば、追試験(大学入試センター試験)の改善を優先するべきであろう。追試験受験については、その条件が厳しく制限されているため、現状では、病気、事故等による欠席にもかかわらず、追試験を受験できない者が相当数存在する。これらの受験者をできるだけ多く救済できるように、追試験受験の条件緩和を要望したい。

3. 個別大学入試の改善

3.1  リスニングテスト、総合試験など、個別学力検査の新しい評価方法の開発、実施に積極的にとりくむ。
3.2  入学定員の一部について専攻を定めない募集単位を設け、学際的な新しい学部教育の可能性を開くとともに、大学進学の際に、未だ進路決定に至っていないような学生に対しても、入学後に適切な選択が行えるような、教育課程、制度上の工夫を講じる。
3.3  推薦入学、AO入試等の特別選抜においては、その趣旨からいって、とかく学力評価が疎かになりがちな面があるが、さまざまな方法を工夫して、基礎的な学力評価を重視するよう努める。必要に応じて、大学入試センター試験の利用等も考慮する。
3.4  増加する入試業務に対処するため、関係教職員の増員を含め、組織的整備を図る。また、教員のFD(ファカルティ・デベロップメント)の一環として、問題作成、面接技法、評価測定等の研修を行うことも検討する。
3.5  個別大学入試の改善のため、複数の大学による問題作成の協力等、試験の準備、実施に関して新しい体制づくりが必要とされている。この実現に向けて、大学入試センターの協力・支援を要請したい。
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