◆ 資 料 編
4. ハワイ大学の障害学生支援プログラム


資料:ハワイ大学の障害学生支援プログラム

 ハワイ大学マノアキャンパス(University of Hawaii at Manoa)では、障害学生の修学を援助するために、“Equal Opportunity for Students with Disabilities"を合言葉とする障害学生支援プログラム(KOKUAプログラム)を実施している。“KOKUA"とは、ハワイ語で“help"を意味する。

4-1 KOKUAプログラムの歴史
(1)1965年以前:障害学生のための支援プログラムがなく、入学した全盲の学生にhonour student(成績優秀な学生)がガイドやノートテイクを行っていた。
(2)1966年:KOKUAプログラムの開始。プログラム開始当初は、@障害を有する学生の大学生活と学習の援助、Aその他特別な配慮を要する学生(英語が不自由な者など)の援助の二つを目的としていた。このうち、障害学生への援助は、車椅子の学生と全盲学生を対象に始まった。
(3)1995年以降:資金不足のため、援助を障害学生に限定するようになった。

4-2 プログラムの対象
(1)読み書き障害(Dyslexia)、学習障害(LD)、注意欠陥障害(ADD)を持つ学生
(2)視覚障害、聴覚障害を持つ学生
(3)身体的な障害を持つ学生
(4)心疾患、腎疾患、喘息などの慢性病を持つ学生
(5)その他、援助の必要のある学生

4-3 プログラムの実施機関
◇大学のStudent Service Center内にプログラムオフィスを設置し、8時〜16時30分の間サービスを行う。
◇スタッフ:チーフディレクターと数名の専任スタッフ。チーフディレクターであるDr. Ann Ito氏(1999年現在)は、ご本人が全盲者であり、そのことがプログラムの質を高める上で大きな力となっている。
◇オフィス設備:カウンセリングルーム、障害学生のための学習室と試験室、サロン、ミーティングルーム、コンピュータールームなどが設けられている。

4-4 プログラムの支援内容
(1)入学時のオリエンテーションとガイダンス
 @ キャンパス案内
 A KOKUAプログラムの紹介と説明
 B 授業科目履修に関する助言
 C 教科書の代理購入(一般学生ボランティアによる)
(2)履修科目の優先処理
〈例〉@ 車椅子の学生は、移動が容易な教室の授業を優先的に選択できる。
   A 慢性病で午後病院に通院する必要のある学生は、午前中の授業を優先的に選択できる。
(3)授業場面における援助と授業理解に関する援助(カッコ内は対象学生)
 @ 手話通訳(聴覚障害の学生)
 A ノートテイク・サービス(聴覚障害、身体障害、読み書き障害の学生)
 B 授業のテープ録音、拡大文字・点字サービス(視覚障害の学生)
 C 授業の代理出席(慢性疾患、身体障害の学生)
 D スペルチェック用のポケコンの貸し出し(読み書き障害、学習障害の学生)
 E 授業理解のための家庭教師の紹介
 F 単位取得が困難な場合の代替科目の認定(認定は学長決裁)
〈例〉読み書き障害や言語学習障害の学生の外国語科目の単位は、日本語であれば、「日本の歴史と文化」で読み替える。
(4)各学部教官への情報提供と支援
 @ 学生の障害の状態と配慮事項の説明
 A 教官からの相談の受付
(5)テストに対する配慮(採点は一般学生と同様の扱い)
 @ テスト時間の延長:通常15分延長、最大2倍まで(読み書き障害や身体障害の学生)
 A 別室での単独受験(注意欠陥障害の学生など)
(6)障害学生のカウンセリングと障害学生どうしの交流の場の提供
  ⇒障害を有する学生の精神安定と大学生活の継続の上で重要度が高い。

4-5 プログラムの実施方法
(1)学生のプライバシー重視を大原則とするので、プログラムを受けるかどうかは学生の自己申告による。
 @ 明らかに障害が認められても、本人の申し出がなければ対象としない。
 A 援助の内容も本人の希望に基づく。希望のない援助は行わない。
(2)同様に、プログラムを受けている学生の許可なしでは、指導教官に対してもKOKUAセンターが持つ情報を公開しない。指導教官との連絡が必要な時は、まず学生の許可を得る。学生が拒否した場合は、連絡の必要性が感じられても連絡しない。
(3)障害学生がプログラムの存在を知らない場合は、指導教官から紹介してもらう。
(4)プログラムの実施主体
 @ 指導教官との連絡と調整:プログラム専任スタッフ
 A オリエンテーションとカウンセリング:プログラム専任スタッフ
 B 代替科目の承認:チーフディレクターによる学生面接と学長への文書依頼。
 C 授業場面での援助:学生ボランティア

4-6 プログラムの現状(1999年現在)
(1)毎年400〜500人の学生がプログラムの対象となっている。
(2)対象学生の約半数は、読み書き障害、学習障害、注意欠陥障害の学生。
(3)対象学生の1/3は重複障害を持つ。また、半数以上の学生が25歳以上の年齢である。
(4)ノートテイクは希望が多く、1999年度は175のクラスで実施している。
(5)障害があっても、家族や友人の援助で学生生活を送り、プログラムを必要としない学生もいる。

 (※本資料は、1999年3月にKOKUAプログラムの専任スタッフから聴取した内容をまとめたものである)

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