平成14年度着手の大学評価に対する意見について

平成14年11月22日
国立大学協会
第8常置委員会委員長
  佐 々 木  毅

 貴信(評学機構評1第131号)において、平成14年度着手の大学評価について意見を徴せられました。貴機構の大学評価については本委員会はこれまで数度にわたって、「申し入れ」を行っており、今回の評価についてはその一部を取り入れていただいたものと理解しますが、改めて以下の点についてご留意いただくことを御願いします。

評価の理念、基本設計上の問題

 
機構による評価の基本的な理念は、大学が自ら設定した目標の達成度の評価にあるものと考える。しかし機構の評価は、目標の設定自体について枠を設けており、結果として画一的、形式的な評価に傾きやすい。大学の多様性、自主性を活かす評価方法をさらに改善していただきたい。また分野別の教育、研究評価については、論文発表数など相対基準での評点を加える形での評価も行われているが、分野別に評価基準が異なるなど、その方法に問題があることが指摘されている。これについては今回の評価においても同様であり、検討をいただきたい。

実施上の問題点

 自己評価報告書の作成などにおいて、大学側の負担がきわめて重い。とくに小規模大学においては、人員上の制約が少なくなく、通常の業務に深刻な影響を与えかねない。大学における評価作業を軽減するような工夫をしていただきたい。
 特に全学テーマ別評価において、大学が厳しく自己評価し、問題点を指摘した場合には、それがそのまま、機構の評価で問題点としてとりあげられ、低い評価につながった事例が少なからず報告されている。これは評価のゲーム化につながる恐れがある。
 他方でとくに専門分野別教育・研究評価では、必ずしも専門領域の共通の了解ではない、個々の評価員の独自の見解が評価結果に入っていると判断される場合もあった。こうした点で評価員の間での、評価についての共通理解の形成を十分に行っていただきたい。

手続き上の問題

 平成14年4月に発表された評価結果については、大学側が「意見の申し立て」を行ったケースが多かった。国大協の調査によれば、とくに分野別教育・研究評価ではほぼ半数が評価結果に対して「意見の申し立て」を行った。最終的には、全学テーマ別評価で全大学の1割強が、専門分野別教育、研究評価では対象機関の半数以上が、評価結果に納得しないままに、最終的な公表が行われることになった。「意見の申し立て」に基づき、改めて評価の過程にさかのぼって評価の公正性について見直す作業を行っていただきたい。
 また評価の理念は「大学がみずから設定した目標の達成度の評価」であるにもかかわらず、マスコミによって公表された評価結果が恣意的に数値化され、それをもとに大学間のランキング表が作られ、これが新聞紙上などに掲載された事例が多く報告されている。また現在の評価が試行段階にあるという認識も一般にはほとんど見られなかった。こうした周囲の状況に鑑み、評価の理念をより明確にした形で公表が行われるように公表のあり方を改善していただきたい。

以上

[要望先:大学評価・学位授与機構長]