『「知的財産推進計画」に盛り込むべき政策事項』に対する意見

平成15年4月25日
国立大学協会
第7常置委員会

 「知的財産推進計画」に盛り込むべき政策事項について、以下のとおり、当該政策事項を箇条書きで示し、各々につき若干の説明を付すこととする。

I 知的財産人材養成への重点的支援

1. 高度専門職大学院の拡充
(1) 知的財産ロースクールの設置推進
 高度専門職大学院の一つとして、法科大学院が平成16年度から開設される予定であるが、その中において、知的財産に特化した法曹を養成する「知的財産ロースクール」の設置を推進すべきである。知的財産の保護・活用については、当該分野の特殊性から、それを担う人材養成には特段の配慮が必要であり、専門的な法曹人材の養成機関を設ける必要度は高いものと考える。
 なお、当該「知的財産ロースクール」の設置推進の他に、一般のロースクールではあるが、知的財産教育を重視しているロースクールに対する支援を実施することも求められる。
(2) 技術経営大学院(MOT)の設置拡充
 高度専門職大学院の他の形態として、いわゆる「技術経営大学院」(MOT)の設置を拡充する政策も重要である。当該大学院を全国に20ないし30程度を配置することは、我が国の科学技術の発展と産業の振興において、有用であると思料する。

2. 既存の理科系大学院における知的財産教育の充実
長期的視野に立脚した知的財産の創造と人材の育成は、大学の基本的任務の一つである。その意味では、上記専門職大学院以外の既存の理科系大学院においても、知的財産に係る教育を充実させる必要度は高く、その拡充のための政策の発動が求められる。

3. 企業家育成プログラムの支援拡充
 近時の数年間は、各大学において、政府の支援等により、企業家を育成するための各種のプログラムが立案・実施されているが、当該プログラムに対する支援を更に充実することにより、大学発ベンチャーの格段の創出を目指すことも肝要である。

4. ポスドク等の若手研究者に対する実務・実践能力の修得等の支援強化
 博士課程修了者やいわゆるポスドク等の若手研究の採用が民間において促進されるように、当該若手研究者に対する実務・実践能力の修得等に対する支援を強化する対策が求められる。

5. 特許対象外知的財産の創造促進と保護制度の整備
 大学が担う先端的な基礎科学研究は、幾多の革新的な技術の創出に貢献している。
 これらの先端的基礎科学研究には、特許に結実しないが、基本的な知的財産の創造に係っているものが多い。このような特許対象外の知的財産の創造を促進することは、知的財産戦略の長期的視野において極めて肝要である。この種の知的財産についてはその保護制度の整備を含めて、積極的な政策が求められる。
 例えば、医療分野の発明者に対する国による特段の支援方策を講ずることが重要である。

II 大学における研究成果の権利化推進

1. 国立大学(法人)に対する知的財産本部設置支援の拡充
 今年度、大学における知的財産本部の設置に関して、30大学に対して支援措置を取るべく、現在、手続が進行中である。国立大学における研究成果の権利化を促進するためには、それに選ばれなかった国立大学に対しても、支援の拡充を図ることが必要である。


2. 国立大学(法人)に対する特許出願・維持経費等の予算化
 国立大学(法人)に対して、特許出願の明細書作成、弁理士費用、海外出願や国際(PCP)出願費用、特許維持費用等に係る経費について、必要な予算措置をなすことが求められる。

3. 研究費の一部を特許経費に充当する等の措置明確化
 上記II(2)に関連するが、国立大学における現行の研究費制度において、研究費の一部を特許費用に充当する等の措置を取り得ることを明確化すべきである。

4. 企業から大学への寄付等に関する税制措置を含む環境整備の具体化
 知的財産戦略大綱においては、企業から大学への寄付等に関する税制措置を含む環境整備については、「検討を進める」(21頁)とされているが、より強く「促進する」ことが求められる。

5. 共同研究に関する特許出願時における各発明者の寄与度の明確化
 知的財産戦略大綱では、郷土研究に関しては、特許出願時において、各発明者の寄与度を明確化しておくことを「奨励する」(20頁)としているが、より強く「徹底する」ことを図るべきである。

6. 研究者の業績評価において、知的財産関連項目を評価指標として導入することの明確化
 研究者の業績評価において、特許取得状況、知的財産関連項目を評価指標として積極的に活用することを明確化すべきである。知的財産戦略大綱では、これらの項目を「評価指標として活用するよう努める」(18頁)ことを掲げているが、「評価基準」として採り入れることが必要である。

III 特許化・保護の拡充

1. 特許審査の迅速化対策の強化
 この点については、知的財産戦略大綱においても明示されているが(26頁)、その促進は急務である。


2. 知的財産高等裁判所の設置
 知的財産関連訴訟を専門的に扱う高等裁判所を設置し、専門的処理体制を整備する必要がある。

3. 知的財産に係る国際的対応の強化
 特許の一元化・範囲拡大等の国際的特許戦略の構築をなすとともに日本の主導権の確保を図ることにより、知的財産に係る国際的対応の強化を具体化する必要がある。

[要望先:内閣官房知的財産戦略推進事務局 中野正道内閣参事官]