「大学評価・学位授与機構の評価事業の今後の在り方について(中間まとめ)」について(意見

平成15年9月25日
国立大学協会会長   佐々木 毅
同 第8常置委員会委員長 河野 伊一郎

  大学評価・学位授与機構(以下「機構」という。)の将来のあり方は日本の大学の発展の方向にきわめて重要な影響を及ぼすものであり、我々はその役割を重視するものである。新しい社会への知的活力を形成するためには大学に対する外部からの厳しい監視と同時に、大学が高度の自律性・自主性を発揮し、それが評価されることによって高い活力が生み出される仕組みが不可欠である。こうした観点から、標記文書(以下「中間まとめ」)について以下の3点の意見を申し述べたい。

1. 機構が認証評価機関として行う大学評価(「中間まとめ」にいうところの「新たな第三者評価」、以下「第三者評価」という。)は二つの性格をもっている。すなわち一方で大学が大学として最低限の条件を備えていることを確認し、それを保証する機能(質的保証機能)と、他方で第三者の観点から大学の自己改善の努力を検証し評価することによって、さらに改善を促すという機能(検証評価機能)である。両者はその基準が明確に異なり、前者については「機構として大学に必要と考える最低限の条件」(「中間まとめ」p.8)が基準となり、後者については「大学の目的及び目標」に即し、しかも「評価の多面性」(同)が重視されねばならない。しかし「中間まとめ」はこの両者を同じ実施プロセスの中で一括して行うことを構想している。それぞれについて具体的にどのような方法で行うのかについて明確に述べていない。この点について、上記の2つの機能との関連を含めて明確にお示し願いたい。
2.  国立大学法人の評価については、国立大学法人評価委員会は中期目標の達成度を評価するものとなっているが、機構は「教育研究の状況」(p.11)について、「分野別の研究業績等の水準」(同)を含めて評価を行うとしている。そうした評価がどのような形で行われるのか、それが中期目標の達成度の評価にどのように結びつくのかが明らかでない。また大学全体としての評価と、各部局の評価とがどのような形で組み合わされるのかも明らかでない。また「大学情報データベース」を作成する(p.14)ことになっているが、それは用い方によっては、画一的な評価基準を強制する機能を果たすことになりかねない。国立大学法人制度そのものがまだ不確定な要因を多く含むことから、機構の評価のあり方についても不明確な点が残らざるを得ないことは事実であるが、上記の点についてできる限り明確な理念を示すとともに、これからどのような日程で評価のあり方を検討し、具体化していくのかについて現時点での見通しをお示し願いたい。
3.  以上の二点を通じて、最も基本的な問題は、大学の教育研究についての評価をどのように効率的に行い、しかも信頼性を高めるかという点である。信頼性の低い評価が強制され、それが大学に対する社会の態度を決めることになれば、評価が自己目的化し、大学の教育研究水準に深刻なモラル・ハザードが生じかねない。機構はすでに2回にわたって大学評価の試行を行ってきており、これに機構、大学の両者は多大な人的・物的・時間的コストを投じてきた。この試行評価がどの程度信頼性があり、また効率的であったのかはきわめて重要な問題である。国立大学協会第8常置委員会はこの点について、独自に分析を行い、いくつかの重要な問題を指摘し、これについて機構自身が体系的なメタ評価を行うことを要望してきた。「中間まとめ」は「現行の試行的評価の評価手法等について総合的な検証」(p.14)を行うとしているが、それは機構のあり方についての将来の提案の一つとしてではなく、将来の評価のあり方を考えるうえでの不可欠の基礎と位置付けるべきものである。こうした観点から、現行の評価についての体系的な評価を早急に行い、その結果を御公表願いたい。
  以 上

[要望先:大学評価・学位授与機構 木村 孟]