日本の将来と国立大学の役割 >> 知識・技術の創造拠点として
1 知識・技術の創造拠点として

 国立大学は日本の知識・技術の創造にこれまで大きな役割を果たしてきた。その役割は現在でも変わっていないだけではなく、むしろ大きくなっている。
● 日本の国立大学は、世界のトップレベルの大学に伍している
 自然科学系の世界の主要学術雑誌での発表論文のデータベースから、1999年の論文生産上位15位までの大学全部と、他の主要大学について、大学別の論文生産数のシェアを算出し、その動向をみた(下図) 。これをみると日本の主要大学はアメリカをはじめとする世界の大学に決して引けをとらないし、そのシェアも拡大している。

図表1-1 世界の自然科学発表論文数にしめる各国主要大学のシェア

● 日本の大学の国際的影響力は上がりつつある
 日本の大学の研究論文数については、欧米と比べて、被引用回数が少なく、いわば水増しされている、という批判がなされてきた。しかし日本の主要大学について、被引用回数を集計してみると、被引用回数は着実に上昇してきている。日本の中堅の論文はアメリカの主要大学とあまり変わらず、問題は、一件あたりの引用回数がきわめて多いスーパースター級の論文で遅れをとっている点にある。そうした研究は、学界全体が長期的に育てていくものである。そうした芽はいまあちこちに現れており、それをさらに育てることこそが急務である。
● 日本の上位11位まではすべて国立大学

 日本の国内でみると、学術研究の中で、国立大学の果たしてきた役割はきわめて大きい。前と同様に、日本の大学の自然科学分野での国際的な学術雑誌での発表論文数を大学別に集計した。その結果、上から11位まではすべて国立大学となる。

 発表論文の数のシェアを見ると、日本の上位30大学の中で国立大学のシェアは90%となり、さらに上位50大学についても83%が国立大学で行われた業績だった。(右図)

 しかも国立大学の中でがんばっているのは、大都市にある、いわゆる旧七帝大ばかりではない。論文生産数上位50位の中には国立大学が32大学はいる。それぞれの分野で単科大学が大きな役割を果たしているのと同時に、いわゆる地方国立大学も重要な役割を果たしていることを示している。これらの大学は地方にあって、先端的な学術研究のセンターとしての役割を担っている。

図表1-2 国公私別発表論文シェア

● 企業とのリンクも太くなっている
 上に述べた国際水準での基礎研究の拡大と同時に、応用的な技術についての研究も行われている。


 とくにセラミックスなどの材料関係、エレクトロニックス関係の精密機械、土木建築などの分野では国立大学と民間企業との連携が拡大している。

 「民間との共同研究」制度を利用した開発プロジェクトは、昭和58年に始まって以来、急速に増加し、平成11年度では3000件を越えた(右図)。これはとくに地方でのハイテク産業に大きなインパクトを与えようとしている。

図表1-3 民間等との共同研究 − 課題別の研究課題数


資料出所: 図表1-1、2は 米国の科学情報研究所(Institute for Scientific Information −ISI)が作成した学術論文データベースのうち、自然科学(医学、工学、農学など応用分野を含む)の学術論文のタイトル、著者とその所属機関などをすべて収録した「拡大自然科学データベース」(収録学術雑誌数は約5700種)から作成。図表1−3は文部科学省しらべ。


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