日本の将来と国立大学の役割 >> 中核人材の養成拠点として
2 中核人材の養成拠点として

国立大学はまた、社会の中核的な人材の養成に大きな役割を果たしてきた。

● 高度職業人の養成
 日本の大学生の約8割は私立大学に在学していることから、私立大学に対して国立大学の独自の存在意義は少ないという議論がある。しかし国立大学は、専門職業人の養成、そして高度の研究者・技術者の養成に中核的な役割を果たしている。
 学部段階(右図下段)では、人文・社会等の学部では国立大学に在学する学生の比率はたしかに1割強にすぎない。しかし理学・工学・農学などの技術・自然科学の分野では4割近くの学生が国立大学に在学し、社会へのサービス人材を養成する保健・教育でも同様である。
 さらに、高度の研究開発を担う人材を養成する大学院修士課程では、理・工・農の合計で、学生数の7割を国立大学が占めている。保健教育関係でもほぼ同様である。研究者養成が目的となる博士課程では、国立大学の役割はさらに大きく、理・工・農の博士課程の学生の85%強は国立大学に在籍している。
● 学部教育と大学院の強い連携
 日本の国立大学の大きな特徴は、大学院での教育と、学部段階での教育とが密接に連携しつつ行われていることにある。
 学部卒業学生の大学院への進学率は、専門分野によって大きく異なるが、国立大学の場合の大学院進学率は専門領域によらず高い(下図)。とくに理学、工学、農学といった分野では、国立大学での学部から大学院修士課程への進学率は5割程度に達しており、私立大学とこの点で大きく異なる。
 こうして学部段階で高度の専門教育をおこない、それが大学院レベルでの教育に結びつく、という形で日本の国立大学は、とくに自然科学、技術系の分野で中核的な人材を養成する役割を果たしてきた。

図表2-1 学部・大学院の学生数 国公私別 平成12年

 

 こうした機能は、日本の経済力の基盤となってきたにもかかわらず、自明視されて、マスコミ等でも取り上げられることが少ない。しかしこうした重要な基盤が崩れることになれば、日本の将来に大きな禍根をのこすことになるだろう。

図表2-2 大学院への進学率(%) − 国公私別・専門別、平成12年


図表2-3 大学教員の出身大学
    博士号所持者(外側円)
     修士・学士号所持者(内側円)

 

● 学術的なリーダーを作ってきた国立大学

 こうした背景から、特に学術研究分野において、日本の知の発展の中核的な人材を養成する中心となってきたのも国立大学である。
  日本の大学教員全体の64パーセントは国立大学の出身者であるが、そのうち博士号を持つもののみを選んで集計すると、その割合は、73%になる。(左図)

  また国内外の学術関係の学会、協会などが贈る学術賞の受賞者を、出身大学別に集計してみると(下図)、8割近くが国立大学・大学院の出身者である。しかも受賞回数が多い人ほど、その比率が高まる。


図表2-4 学術賞受賞者の最終出身大学

 私立大学がそれぞれ、その特徴を生かした、個性のある教育研究を行い、それが日本の学術研究を支える上で重要な役割を果たしてきたことはいうまでもない。しかし現在の日本の知的資産を支えるうえで、国立大学がそれにもましてきわめて重要な役割を果たしていることがあらためて認識される。


● 国際社会への協力 − 大学院留学生の7〜9割は国立大学に在籍
 国立大学はまた、国際的な中核人材の養成にきわめて大きな貢献をしている。日本の大学院への留学生のうち、国立大学は7割を引き受けている。しかしそのなかでも、工学をとってみれば国立大学は88%、農学では92%など、国立大学はとくに途上国の経済発展の基礎となる分野での人材養成の9割程度を引き受けている。


図表2-5 大学院留学生の受け入れ先 ー 平成12年


資料出所:図表2-1、2-2、2-5は平成12年度学校基本調査。 図表2-3 2-4 は学術情報センター研究者データベースから集計。平成8年度現在。

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