第1部 調査結果の報告

1 国立教員養成系大学・学部の改組・改編について

3. 教員養成系大学・学部の今後の役割に関して
 (1) 【問12】は、各学校種段階の教
員就職者の内、教員養成系大学・学部卒業者の占めている割合値を示した上で、今後の方向を尋ねたものである。この設問に関しては、教員養成系大学長・学部長のみならず、その他の一般の国立大学長にも、同様に尋ねたものであり、両者の回答結果を比較できるように『図7ー1』から『図7ー5』のように外円に学部長意見、内円に学長意見の動向を表した。






 

 全体的傾向としては、一般大学長の回答結果よりも、教員養成系学長・学部長の回答結果の方が、すべての学校種教員について、「今まで以上に教員養成大学・学部の比率を高めるべきである」とする意見がかなり大勢を占めており、教員養成系大学・学部の今後への期待と意思とが伺われる結果となっている。
 一般大学長の回答結果は、いずれの学校種教員においても、「現状維持」、「何ともいえない」と無回答の割合が相対的に多く、明確な意思が読みとりにくい。しかし、幼稚園教員については、「短期大学の比率を低め、一般大学、教員養成大学・学部からの供給を高めるべきである」とする意見や、高等学校教員については「教員養成大学・学部ではなく、一般大学での養成を主体とすべきである」とする意見が多く、その点においては一定の明確な意思が伺われる結果となっている。

 (2) 【問13】と【問14】は、国立教員養成系大学・学部の今後の基本方向について尋ねたものであるが、前者は、一般的に考えた場合、後者は、回答者の所属する大学・学部についての場合として、それぞれ「その他」を含む10の選択肢について尋ねたものである。また、両者の問いについて、教員養成系大学長・学部長と一般大学長のいずれについても尋ねたので、『図8』及び『図9』は、その両者の回答結果を表すものである。


   全体の回答傾向は、一般的に考えた場合と、所属する大学・学部について考えた場合のいずれについても、「学校教員養成の役割・機能をより強める」、「地域における教員養成・教育研究の拠点とする」、「学校教員に対する現職教育機能を強める」の3つの項目に指摘が相対的に集中しているということが出来る。しかし、一般大学長の回答結果は、教育大学長・学部長の回答に比べると、とくに「学校教員養成の役割・機能をより強める」とする項目の指摘は低い。むしろ、「一般社会人に対する生涯教育機能を強める」、「教員養成以外の方向に転換する」、「生涯学習の教育機能を充実させ、指導者を養成する」等の項目について、教員養成系大学長・学部長より高い割合で回答している。ただし、「教員養成以外の方向に転換する」ことに関しては、一般的には支持しながら、所属する大学・学部の場合についてはそれが困難であると感じており、その方向を指摘した者の割合は低かった。

 (3) 【問14】で回答した今後の基本方向に進める場合に、どのような問題があると感じているのであろうか。この点について、【問15】は、「その他」を含む10の選択肢について、2つ以内の複数選択可として尋ねた。
 『図10』がその結果を表しているが、「文部省の政策(40.8%)」と「国の財政政策(53.1%)」の2つの項目を指摘した者が多かった。今回の「5000名縮減」方針とそれへの対応に追われた事態に象徴されるように、各大学・学部が進むべき基本方向を模索し、足を踏み出そうとする際に、やはり現実的には国の政策と財政が基本方向を左右する要因として横たわっているという認識が示されているということが出来る。

 

   (4) 【問16】は、各大学・学部における現在の改革課題について尋ねた。「学部理念・制度等に関する課題」、「学生教育の向上に関する課題」、「学生の就職等に関する課題」の3つの内容カテゴリー毎に7つの項目、「その他」を含めて、合計22の項目を選択肢として用意し、3つ以内の複数選択可として回答してもらった。
 『図11』は、その回答結果を表したものである。全体として、注目される項目は、6−カ「大学院の整備・充実(49.0%)」、15−ソ「教免法改定に伴う教員養成カリキュラム全体の見直し(44.9%)」、17−チ「教員就職率の向上(46.9%)」の3つの項目であり、それぞれ半数近い指摘がなされている。教員養成系大学院修士課程や連合大学院博士課程の整備問題、教免法改定や厳しい教員採用状況への対応問題など、現時点での教員養成系大学・学部をめぐる焦眉の課題がこの結果に表れているということが出来る。

   次に、指摘の多かった項目は、2−イ「現職教員の研修への対応(28.6%)」、7−キ「教員養成系課程以外の課程の新設・整備・充実(28.6%)」、11−サ「いじめ・不登校などの教育問題へ対応する教育実践力の強化(26,5%)」、13−ス「教育実習や子どもと直接触れ合う体験的学習機会の整備・充実(34.7%)」などであり、それぞれおよそ4分の1あまりの指摘があった。これらは、教育活動の面に関する項目が多く、先に指摘した3項目の具体的内容に関わる項目であり、当面する現実の教育的な課題への対応が厳しく自覚されているものということができる。
 さらに、3つの内容カテゴリーの別に考察してみると、「学部理念・制度課題」がもっとも多く指摘されており、これに次いで、「学生就職対策課題」、それから「学生教育向上課題」が続いている。ハード面の改組・改革が実行されている現段階の傾向と見られるが、それが進むに従って、改革の課題は、次第に、「学生就職対策課題」へ、引き続いて「学生教育向上問題」へと移行していくものと考えられる。


4. 「新課程」(非教員養成課程)及び「学科」に関して 
(1) 【問17】では、「新課程」及び「学科」が現状において有効な役割を果たしているかどうかの認識について尋ねた。『図12』は、その結果を表しているが、「問題が多い」という意見は全くなく、「有効な役割を果たしている(16.3%)」と「有効な役割を果たしているところもあるが、問題のあるところもある(46.9%)」とあわせて6割あまりとなり、問題を抱えながらもまずまずの現状にあるとの認識が表明されている。

   (2) 次に【問18】と【問19】において、新課程の今後について尋ねた。

   『図13』は、【問18】の結果を表しているが、「現状維持でよい(28.6%)」、「新課程としては維持するが内容は再編すべき(26.5%)」とする意見が、それぞれ4分の1あまりとなっている。規模を縮小したり、あるいは拡大したりする意見は、それぞれ1割にも満たず、「廃止すべき」は全くなかった。内容的な再編・整備を進めながら、現在の役割を一層充実・遂行できるようにしたいとする意思がうかがえる。
 「その他」が1割以上あるが、「未だ判断できない」や「改組後の状況が予測できない」といった回答以外に、「まず内容の充実を図ること」といった内容の回答が4学部あった。

   『図14』は、【問19】で新課程の今後のあり方を尋ねた結果であるが、これも現在の理念とされる「新しい専門家養成を目指す(38.8%)」と「教員養成を補完する役割(25.5%)」に集中している。「幅広い教養教育を行う」や「教育目標が明確でないため、再検討の余地がある」という項目の指摘は1割前後であった。
 「その他」には、「新しい専門家養成」と「教員養成の補完」を合わせた方向であるとの意見や「教員養成との相乗効果の発揚」を図る方向であるとの意見があった。

  

5. 教員養成系大学・学部と関係諸機関の連携について
(1) 【問20】と【問21】は、 附属学校園との連携問題について尋ねた。
  【問20】は、現在の連携活動の内容を「その他」を含む11の項目を選択肢として尋ね、『図15』は、その結果を指摘された割合の高い順に並べたものである。

   「教育実習の事前・事後指導(98.0%)」、「教育実習(95.9%)」、「附属学校の公開教育研究会への学部教官の派遣(95.9%)」、「附属教員と学部教員との共同した教育研究の取り組み(89.8%)」、そして「附属教員による学部授業の担当(83.7%)」という5つの項目に集中し、いずれも全体の8〜9割ほどの大学・学部ですでに実施しているものである。
 しかし、この結果から考えられることは、近年、新たに提唱されている課題、たとえば「教育実習以外での学部学生と附属学校児童・生徒との交流」、「附属学校とのインターネット化」、「附属学校の施設等を利用した公開講座等の開催」、「大学教員による附属学校の授業担当」、「附属教員をも含めた公開講座等の開催」などのさらに一層緊密な連携協力の活動については、なお今後の課題であることを示しているということもできる。
 【問21】は、附属学校自体のあり方として重視すべき方向性について尋ねたものであるが、「その他」を含む9つの内容項目の中から順位をつけて2つまで選択してもらった。その結果を表す『図16』によると、第1位の指摘が多かったものは、「学部と連携した教育研究の充実(46.9%)」と「学部と連携した教育実習の充実(36.7%)」であり、第2位の指摘が多かったものは、「学部・大学院の授業における附属学校施設の活用(26.5%)」、「地域の教育研究のセンター的役割(16.3%)」などである。

   第1位選択の2項目は、現在行われている体制に関するものが中心であり、第2位選択の対象とされているものには、今後の課題というべき事項が位置づけられていると考えられる。
 全体として、学部との連携という点が、重視されていると考えられる。

 (2) 【問22】から【問26】では、地元の都道府県教育委員会等との協議・連携について尋ねている。このような協議・連携の課題は、教養審の第一次答申において、今後一層推進すべきとの方針が打ち出されているが、【問22】はその方針に対する態度を尋ねた設問であり、『図17』がその結果である。
「どちらともいえない」とした2大学・学部を除いてすべてが「賛成」(「大いに賛成(77.5%)」+「どちらかといえば賛成(18.4%)」=95.9%)と回答している。
 【問23】では、【問22】の回答の理由を自由記述で求めた。その主な理由は、教育実習等の実施のため、大学院での現職教員研修問題のため、あるいは地域のニーズに応じた教員養成のためなどである。しかし、他方で、大学学部の主体性維持の問題や、地域密着型のみになることの危惧についての指摘も見られた。

   以下に、主な理由を挙げる。
□1年から現場の実態にふれさせる教育をするには互いの連絡協議が必要。□養成側と採用側の協力は不可欠。□実践重視の観点から相互援助が必要。□現職教員の資質向上について特段の協力が必要。□大学院での現職教育問題のため。□大学のカリキュラム内容が教育現場の実際と遊離しないため。□現場の実状に明るい人が養成カリキュラム開発に参画することで実効性のある教員養成。□養成・採用・研修の一貫したプログラムの構築。□教員の人事交流のため。□人的資源の相互有効活用。□公開研究会等の後援のため。□地域の教育現場の教育問題やニーズと、養成現場のギャップの解決。□地域が求める教育を充実させるため。□大学が行政についての理解を深める、学校の課題についての生きた情報を得る。□理念的な相違もあり、管理的なスタンスからの要望が入ることへの危惧がある。□連携協力をどうすすめるかが課題。□大学の主体性の維持の問題あり。□現場の課題への対応のみでは基礎が不確かになる。□県外学生も多く地域密着だけでは対応できない。□地元との連携だけでは不十分。

 【問24】は、現在行っている協議・連携の現状について尋ねた。【図18】は、その結果を表すものだが、9割の大学・学部で、「すでに行ってきている」との回答が寄せられている。【問25】は、地域との協議・連携を「すでに行ってきている」大学・学部の取り組みについて自由記述の回答を求めた。それによれば年数回の連絡協議会や懇談会が中心であるに過ぎないことが明らかになった。
 その中でも、特徴的な例として、次のようなものがある。
□(計画中であるが)合同研究会や評価提言委員会。□教育実習のあり方検討や現職教員研修のあり方を検討する会。□学部若手教官と教委課長・参事クラスとの月1回の研究会。□遠隔教育開設連絡協議会。□教育委員会スタッフによる正規の授業外の年数回程度の教職講座。□科研費による共同研究(教師ライフステージ総合研究)。
 【問26】にも、自由記述で、協議・連携を進める上での困難点や活性化の方策について尋ねた。困難点としては、「双方とも忙しい(スケジュール調整の困難)」や「財政的裏付けの問題」等があげられている。

   (3) 連携のもう一つの面として、他の大学との大学間協定や、単位互換制度の問題がある。【問27】から、【問29】には、これらの点について尋ねた。

 

   【問27】は、この問題についての一般的態度を尋ね、その結果が、『図19』である。教育委員会等との関係と異なり、「どちらともいえない」という判断保留が4割近いことが特徴である。
 【問28】は他大学との単位互換制度の実施について尋ねたが、『図20』にその結果を示した。「すでに行ってきている」と回答した大学・学部は全体の32.7%(16大学・学部)にすぎない。しかも、その実体は、相手先が外国の大学であるなどで、国内の、しかも近隣大学との連携のケースは少ない。このような判断保留や未実施の原因がどこにあるのかが大きな問題であろう。
 【問29】は、「単位互換を進める上での困難な点、及び必要な方策」について、自由記述で尋ねたものである。この問題については、次のような困難点が、指摘されている。□近隣に同レベルの大学がない。□話し合いの窓口が見いだせない。□私大の方の授業が充分でない場合、一方的に国立の方の負担増になりかねない。□時間割、カリキュラムの違い、単位認定科目の決定など。□相手先大学との学年歴の相違、距離の問題。□教育内容の見極め、双方の具体的内容が必ずしも明確でないため。□必ずしも学生が単位互換の授業を積極的にとろうとしない。□授業料等の取り扱い、事務量の増加。□評価の客観性。□互いのカリキュラムの整備の不足、学生の安易な方向への流れ。□施設設備、人的資源の不足。□単科大学と総合大学の授業科目の専門性の相違。□単位互換にふさわしい科目が必ずしも多くない。

 

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