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男女共同参画社会の実現に向けて,国際的に積極的な取組みが展開されているが,日本においても,「男女共同参画社会を築くことは,我が国の重要な政策課題」となった(総理府『平成11年度男女共同参画白書』)(注1)。特に1995年9月に北京で開催された第4回世界女性会議で採択された北京宣言と行動綱領を受けて,「男女共同参画審議会」が設置され,1996年7月に「男女共同参画ビジョン−新たな価値の創造−」が内閣総理大臣に答申された。さらに,それを受けて,同年12月には,内閣総理大臣を本部長とする「男女共同参画推進本部」によって,男女共同参画社会の形成の促進に関する2000年までの国内行動計画として「男女共同参画2000年プラン」が策定された。

法的整備の面では,男女雇用機会均等法(1986年施行),育児・介護休業法(1992年施行),そして1997年には男女雇用機会均等法を強化する改正法が成立し,1999年4月1日から施行された。1999年6月には,男女共同参画社会基本法が成立,施行され,その前文は「男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題として位置付け,社会のあらゆる分野において,男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。……国,地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に関する取組を総合的かつ計画的に推進する」ことをうたっている。

大学は,次世代の教育,知の生産と伝達,社会的文化的価値の創造という重要な役割を担う機関であると共に,多くの多様な人材を雇用・育成する組織である。男女共同参画社会実現への努力の中で,大学が担うべき役割と責任は大きい。国立大学協会は,「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会(JAICOWS)(Japanese Association for the Improvement of Conditions of Women Scientists)」から本協会へ要望書(平成11年5月7日付)が寄せられたのを契機に,男女平等への国際的および国内的動きの中にあって,日本の国立大学は男女共同参画の面でどのような現状にあるかを把握し,男女共同参画促進のために何をするべきかを提言することを目的として,平成11年11月に「男女共同参画に関するワーキング・グループ」を設置し,議論を重ねた結果,本報告書を作成した。

本報告書は,まず第T部で,国立大学における男女共同参画の現状について統計的分析を行い,特に女性の社会進出の面で先進的位置にあるアメリカおよびヨーロッパの高等教育との比較を行うことによって,日本の大学が男女共同参画の面で著しく立ち遅れている実情を指摘する。第U部では,このような状況を改善し,大学自体における男女共同参画を推進するために,国立大学は具体的に何をなすべきかを提言する。
 

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