第1部 国立大学における男女共同参画の現状


1.統計的分析

(1)四年制大学の教員(教授,助教授,講師)における女性比率は,全体として10.1%と低いが,中でも,国立大学における女性教員比率は6.6%と,公・私立大学に比べ一段と低い。国立大学では,学部学生の間の女性比率は33.4%となっているが,修士課程では23.0%,博士課程では21.6%に低下し,教員になると6.6%という低い割合となる(図J−1:平成10年度/1998年)。

高等教育の拡大の中で,女子学生数は大きく増加したが,教員雇用という面では,国立大学は女性にとって著しく狭い門であり続けている(図J−2:1973〜1999年)。

(2)国立大学教員数を性別,年齢別に見ると,男性教員の圧倒的多さ,女性教員の極端な少なさ,そして,男性の場合は,年齢上昇と共に,助手,講師,助教授,教授と昇進するパターンを示しているが,女性の場合は,すべての年齢層で,低いレベルで平坦になっている(図J−3:平成10年10月1日現在/1998年)。

(3)国立大学の平成10年度の女性教員比率6.6%を職階別に見ると,職階が上になるほど低下している。講師で11.8%,助教授でも7.9%と低いが,教授においては4.1%,学長は1名で1.0%,副学長0名となっている。女性教員比率のこのような低さは,1970年代以来ほとんど改善されていない(図J−4:1973〜1998年)。

(4)各国立大学を女性教員比率の高い順に並べ,さらに,博士課程学生,修士課程学生の女性比率と比較して一覧表にしたものが表J−5である。女性教員比率が高いのは,女子大学2校に続き,語学系,教育系,看護福祉学を持つ医学系大学である。逆に,女性教員比率が低いのは,工学系,農学系,旧帝国大学に多い。

(5)国立大学の教員,博士課程学生,修士課程学生,学部学生における女性比率を専門分野別に見ると,女性教員比率は,どの分野でも,女子学生比率に比べ低いが,特に,工学系1.3%,農学・水産系1.6%,理学系2.6%,商船系2.9%,医・歯学系3.9%という低い水準にある(図J−6:平成10年度/1998)。

 2. 国際比較

(1)アメリカでは,1970年以降,高等教育における女性の割合はめざましく上昇し,学部学生の間では1979年に,修士課程では1980年に,女性が過半数を超えた。女性比率はその後も上昇し続け,1995/96年には,修士課程では55.9%,博士課程でも39.9%に到達した。女性教員比率も着実に上昇し,39.6%となった(注2)(図US−1:1969/70〜1995/96年)。

(2)アメリカにおけるフルタイム教員の女性比率を職階別にみると,1985〜1995年の10年間に,すべての職階で女性比率は着実に上昇した。レクチャラー等の下の職階から上にいくにしたがって女性比率は低下するとは言え,教授でも17.8%に達している(図US−2:1985〜1995年)。

(3)アメリカにおけるフルタイム教員の女性比率を大学のタイプ別にみると,1992年には,「研究大学」(Research Universities)のカテゴリーにおいても,公立大学で23.3%,私立大学では30.9%に達した。「修士課程提供大学」(Comprehensive Colleges and Universities)の間では,女性比率は公立大学で33.9%,私立大学で35.2%,「リベラルアーツ大学」(Liberal Arts Colleges)(主に私立)では38.9%にまで上昇している。女性比率は,1987年から1992年の5年間に著しく増加した(図US−3:1992年および1987年)。

(4)アメリカにおける女性教員比率(フルタイムおよびパートタイム教員の計)は,専門分野によりかなりの差がある。女性比率がいまだに低い分野として,工学系(6.2%),農学系(9.9%),物理学系(13.8%)が残っている(図US−4:1993年)。

(5)アメリカにおける修士,博士学生の女性比率を専門分野別に,1970年と1995年を比較すると,かつては男性の領域とされていた分野(例えば,法学,ビジネス)に,女性がめざましく進出したことがわかる。工学および工学関連テクノロジー系の博士課程だけが,まだ12.5%,9.1%と低い割合に留まっている(図US−5:1995/96年および1969/70年)。

(6)ヨーロッパその他の国における女性教員比率を見ると,女性比率がかなり高い国(特に准教授および助教授レベルでの女性比率が非常に高い)から,比較的低いレベルにある国まで差異があるが,日本に比べると,女性の進出は全般的にはるかに進んでいる(表EU−1)。

日本の大学教員総数における女性教員数と女性比率は非常に低いが,特に国立大学においては,女性教員数と女性比率の少なさが顕著である。アメリカおよび女性の社会進出の面で先進的である国の大学と比較して見ると,日本の大学が男女共同参画の推進の面で著しく立ち遅れていることは明らかである。女性教員を積極的に増やし,女性比率を上げる努力をしていくことが,大学に対して提起された緊急な課題であることが示されている。

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