(注1) 総理府(『平成11年度男女共同参画白書』)「男女共同参画白書の刊行に当たって」より。

(注2) ここでの女性教員比率は,二年制カレッジを含む全高等教育における教員についての数字である。二年制カレッジにおける教員を除くと,1995/96年の女性教員比率は約35%と若干低下するが,大幅な低下とはならない。

(注3) ポジティブ・アクションは,「積極的改善措置」を指す。「積極的改善措置」は,男女共同参画社会基本法および改正男女雇用機会均等法第9条によって,「男女共同参画社会の形成を促進する策」として奨励されている。男女共同参画社会基本法第2条二は,「積極的改善措置」について,社会参画の「機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において,男女のいずれか一方に対し,当該機会を積極的に提供することをいう。」と定義し,第8条は,「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」には,「積極的改善措置を含む。以下同じ。」と明記している。
  改正男女雇用機会均等法第9条は,「「女性のみ」又は「女性優遇」の措置は,……男女の均等な機会および待遇を実質的に確保することを目的とした措置,すなわち,過去の女性労働者に対する取扱いなどが原因で雇用の場に生じている男性労働者との間の事実上の格差を是正することを目的として行う措置については法に違反しない」旨明記している。「女性の能力発揮を促進し,その活用を図る積極的な取り組み(ポジティブ・アクション)を行うことが必要である」としている。(資料C参照)
  なお,アメリカやオーストラリアでは,アファーマティブ・アクションという表現が用いられている。アメリカにおけるアファーマティブ・アクションは,大統領令11246号として発令され(1965&67年),連邦政府と年5万ドル以上の契約があり,50人以上を雇用する事業主に対し,人種や性構成の改善のための目標と実施の日程を示すアファーマティブ・アクション計画書を提出することを義務付けている。その具体的内容は,組織の特徴,時代の社会的価値観その他諸々の要素を反映しており,画一的,固定的なものではない。大学は連邦政府とさまざまな契約(研究契約等)があるため,アファーマティブ・アクション計画書の提出が義務付けられている。

(注4) European Union General Directorate of Research は,EU 諸国におけるサイエンス分野における女性が少ないことを問題として取り上げ,現状把握,問題点分析,改善のための方策をさぐるために,European Commission 内に設置された the European Technology Assessment Network (ETAN)に調査を委託した。ETAN に,EU メンバーのうちの10ヶ国からの諸分野の科学者が集まって Expert Working Group on Women and Science が組織され,同グループは,1999年11月に,報告書 Science policies in the European Union: Promoting excellence through mainstreaming gender equality を提出した。なお,ここでのサイエンスは,自然科学,エンジニアリング,テクノロジー,コンピューティング,社会科学を含む広いものである。
  同報告書は,女性の採用と昇進を推進するため,公的組織におけるジェンダー・バランスを明文化;ピア・レビュー制度に性差別や縁故主義が入らないような改革;公的記録へのアクセスを保障する明文化;科学にかかわる重要な決定機関における女性比率を2002年までに30%に,2005年までに40%にまで引き上げることの目標化;男性と結び付けられてステレオタイプ化されている科学と科学者のイメージの教育を通した変更とそのためのサイエンス教育における改革;科学における女性が置かれている状況を改善するためのさまざまな革新的試みに対する支援・助成,等を提言している。

(注5) スウェーデンの研究者,Christine Wenneras and Agnes Woldは,スウェーデンにおけるバイオメディカル領域の主要な助成団体の一つであるSwedish Medical Research Councilが授与している20のポストドクトラル・フェローシップの決定におけるピア・レビューを分析し,このシステムに性バイアスとえこひいきが入り込んでいることを示した。ピア・レビューは評価の公正さを保障するシステムとして広く採用されているが,実際には,レビュアーによる研究メリットの判定はジェンダーと関連しており,男性研究者の生産性と能力を高く評価し,女性を低く評価すること,女性研究者は男性と同じ評価を得るためには,男性より2.5倍高い生産性が必要であることを示した。著者は,評価の秘密という政策を放棄し,公的助成機関における評価は公的記録であるとして情報へのアクセスの開放が望ましいこと,偏見と仲間意識という人間の弱さに抵抗するシステムが組み込まれたピア・レビュー・システムの開発が必要であると提言している。
  この論文 "Nepotism and sexism in peer-review" がNature(Vol.387, 22 May, 1997)に発表されると,大きな反響を呼び,「女性と科学」あるいは「科学における女性」をめぐって,Nature 誌に一連の研究論文や論点が掲載された。また,ヨーロッパ全体の問題として,さらにユネスコでも取り上げられ,世界的な関心を喚起し,サイエンスからの女性の排除は公正原則に反するのみならず,人的資源の損失でもあることが強調され,サイエンスへの女性の進出を促進するさまざまな取り組みが論じられている。

(注6) セクシュアル・ハラスメントは,女性が男性に対し行う場合,同性間で生じる場合もあるが,男性が女性に対し行う場合が圧倒的に多い。また,教職員から学生に対し,あるいは上位の教職員から下位の教職員に対し行われる場合以外にも,同僚間,学生間にも発生しうるし,留学生に対し行われる人種差別と結び付いたものも起こりうる。

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