東京に近いという条件
横浜は、東京と地続きです。電車に乗れば30分ほどで都心に着き、人も企業も投資も、行政境界を越えて動きます。東京に近いことは大きな力である一方、横浜・川崎独自の圏域をどう築くかという問いを生みます。神奈川県内には50を超える大学があり、大学と地域の関係も一つの行政区域では完結しません。首都圏では、地域の輪郭そのものが見えにくい。これが、本学が向き合っている土地の条件です。

答えは、その土地にしかない
国の政策文書には、大学を核とした地域プラットフォームの構築が掲げられています。しかし、地域プラットフォームは、紙の上の図だけで生まれるものではありません。私自身、神奈川でその組み立ての只中にいます。気候も、産業も、人口の動きも、自治体や経済界との距離も、85の国立大学が置かれた条件は一つとして同じではありません。
全国一律の処方箋は、ありません。答えは、その土地の歴史と現実、人と人との関係の中から生まれます。国立大学それぞれが、まったく異なる持ち場で、同じ問いの前に立っています。
この土地の条件を引き受ける
本学が選んだのは、東京への近さを含め、この土地の条件をすべて引き受けることです。世界に開かれた港、厚い産業集積、自治体や市民との間に積み重ねてきた関係。隣接する川崎市とは、次世代の人材育成の新しい仕組みを共に構想しています。私たちはこれを都市型の国立大学の道と呼んでいます。これもまた、横浜・川崎という土地の条件から生まれた答えです。いま、それを形にするため、足元を掘り続けています。
未来の国民のために
国立大学は、いまここにいる私たちのためだけの仕組みではありません。まだ生まれていない未来の国民が、どの地域に生まれても、低廉な学費で世界水準の学びに手が届く。その約束を国全体で支える仕組みが、全都道府県に置かれた国立大学です。だからこそ地方創生は「地方の大学の問題」ではなく、85大学すべてに関わる、日本社会全体の主題です。藤井会長のコラムにあった「将来像実現のための国立大学システム検討WG」で考えなければならないのは、型を配ることではなく、それぞれの土地の答えが育つ条件をどう整えるかです。経済同友会や全国知事会をはじめ、経済界・自治体の皆さまとも、対話と協働を深めてまいります。それぞれの土地で生まれる答えを、この国の未来を拓く力に育てていく。どの地域に生まれた子どもにも知の扉が開かれている国であり続けるために、力を尽くします。
梅原 出(うめはらいずる)
1962年大阪府生まれ。筑波大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。1992年横浜国立大学工学部教務職員、大学院工学研究院教授、理事・副学長を経て2021年より学長。専門は固体物性物理学。
~梅原学長のお気に入り~

子供の頃から野球などスポーツが好きです。音楽も聴くのも演奏するのも好きです。
写真は昨年度、神奈川大学野球連盟秋季リーグ開幕の始球式のものです。
※本記事に掲載している情報は、2026年7月時点のものです。