広島大学は1949年、人類最初の被爆地・広島に開学しました。原爆で犠牲となられた前身諸学校の学生、生徒、教職員や留学生をはじめ、本学に連なる多くの人々への追悼と鎮魂の思いを胸に、「平和を希求する精神」という理念を今日まで受け継いできました。
被爆から81年。その理念を未来へつなぐことの意味は、今、改めて重みを増しています。被爆者の高齢化が進み、その体験や平和への思いを直接伺える時間は、ますます貴重なものとなっています。一方、ロシアによるウクライナ侵攻や中東での武力衝突が続き、核兵器を巡る国際情勢も一層厳しさを増しています。こうした時代だからこそ、被爆の記憶と教訓を次世代へ継承し、平和を担う人材を育てることは、被爆地・広島にある大学として果たすべき重要な使命だと考えています。
これらの想いを未来へつなぐ象徴として、本年8月に、本学発祥の地・東千田キャンパスにモニュメント「不滅の学灯」を建立しました。平和の象徴である鳩の翼をモチーフとした大小二つの造形は、それぞれ「原爆ドーム」と「8月6日*の日の出」の方角を指し示しています。原爆の犠牲となられた方々を追悼するとともに、先人たちが培った知と平和への志を受け継ぎ、広島大学に連なる人々が誇りを共有し、過去・現在・未来を結ぶ象徴となることを願ったものです。

碑文には、「平和は思索と対話、不断の実践の中にこそ宿る」と刻みました。平和は願うだけで実現するものではなく、行動へとつなげることが大事です。その実践の場が、「平和学長会議」と「ピーススタディーツアー」です。
2024年に始めた「平和学長会議」は、回を重ねるごとに対話の輪を広げています。本年8月6日の第6回会議には、11カ国・地域、17大学から大学トップらが参加しました。初めて「Beyond SDGs」をテーマとする専門家会合も開催し、複雑化する世界の課題に大学がどう貢献すべきか議論を重ねました。
また、2023年に始めた「ピーススタディーツアー」は4回目を迎え、海外協定校などから過去最多の144人が参加しました。学生たちは被爆の実相に触れ、多様な文化や価値観を持つ仲間と対話します。ヒロシマの歴史を自らの課題として受け止め、「平和のために自分に何ができるのか」という問いを、それぞれの国や地域へ持ち帰ることに大きな意義があります。
大学は単に知識を伝える場ではありません。異なる背景を持つ人々が集い、問いを立て、対話を重ね、よりよい社会を創るための知を生み出す場です。分断と対立が深まる今こそ、その役割は一層重要になっています。
「不滅の学灯」が理念を象徴する灯であるならば、「平和学長会議」や「ピーススタディーツアー」は、その理念を世界へ広げる実践です。広島大学はこれからも国内外の大学と手を携え、核兵器のない世界と持続可能な社会の実現に貢献し、「平和を創る大学」としての使命を果たしてまいります。

*8月6日は、1945年に広島へ原爆が投下された「広島原爆の日」です。
越智光夫(おちみつお)
1952年愛媛県生まれ。77年広島大学医学部卒業。95年島根医科大学教授。2002年広島大学大学院教授。広島大学病院長を経て、15年広島大学長に就任。膝関節、スポーツ医学を専門とする整形外科医。15年紫綬褒章を受章。17〜22年日本学術会議会員、11〜17年および22年から日本学術会議連携会員。
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越智学長のお気に入り

昨年くらいから趣味で油絵を描くようになったという越智学長。
この油絵は、友人の整形外科教授がいるイタリアのペルージャを描いたもので、何度も講演に招かれた街を題材にしたそう。
「独学で絵具や筆の使い方から何もかもほぼ初心者です。描くことを今は楽しんでいます。」