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国立大学長リレーコラム

社会のなかの大学〜その役割とは-国立大学システムについて考える-

社会のなかの大学〜その役割とは-国立大学システムについて考える-

東京大学総長

藤井輝夫

一般社団法人国立大学協会会長、そして東京大学総長の藤井輝夫です。このたび、全国の国立大学長がバトンをつなぐリレーコラムという新しい試みを始めるにあたり、第一走者を務めることとなりました。この連載を通じて、読者の皆様に国立大学をより身近に感じていただくとともに、各地域で「知の拠点」を担う大学間のつながりをお伝えできれば幸いです。

世界経済フォーラム(ダボス会議)での議論から

気候変動やエネルギー・食料危機、日本にあっては社会の高齢化など、グローバルにもローカルにも課題が山積するなかで、国際情勢は混乱を極めています。2026年1月に開催された世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)の年次総会においても、社会経済への浸透と影響の著しいAIへの対応とトランプ米国大統領の動向が話題の中心でした。WEFに置かれるエキスパートグループとしてGULF(Global University Leaders Forum)というフォーラムがあります。このGULFのメンバーとして毎年この年次総会に参加していますが、今回の会合ではAIにも増して、トランプ政権はもちろんですが、米国社会と大学との関係を心配する議論がなされました。米国の一流大学は米国社会一般に求められる役割を果たしているのか、という問いが投げかけられている、というのです。

求められる大学の役割とは

いわゆる大学ランキングで高位を占めるような米国の一流大学は、米国外の我々から見ると、学問の動向をリードし、世界から集まる優秀な人材に素晴らしい教育を提供する、大変優れた高等教育機関であり、世界最高水準の研究機関でもあります。ところが、これらの大学はいずれも、学費が日本の国立大学の10倍以上の高額であり、また相当の教育投資をしなければ入学することができない、そもそも庶民には手のとどかない存在である、というのです。また地理的にも、多くの有力大学は東海岸(アイビーリーグ)や西海岸(カリフォルニア)に集中しています。

翻って国立大学は、全ての都道府県に設置され、繰り返しになりますが低廉な学費で、質の高い学びと世界水準の研究とを実現する日本の「知の拠点」であろうとしています。とはいえ、これは国立大学協会あるいは国立大学からの見方であり、日本社会のなかで本当の意味でそのように見てもらえているか、というと、はなはだ心許ないところがあります。国立大学協会会長として、このコラムの試みもしかりですが、国立大学がどのような取り組みを行っているか、大学関係者以外の皆さんにもっともっと知っていただく、お伝えしていくことが、何よりも大事だと感じています。

国立大学システムとして

私は2025年6月から国立大学協会の会長を務めています。全国85の国立大学が「国立大学システム」として連携し、日本における「知の総和」の向上に貢献していくことの重要性を日々実感しています。個々の大学が強みを活かし、互いに補完し合うことで、より次元の高い「知の総合力」を発揮し、日本そして世界のウェルビーイングに繋がっていく、いま、そのようなストーリーを会員校の学長の皆さんと描いていく途上にあります。 

その際に重要なのが、議論を内に閉じないで、国立大学関係者以外の皆さまとも課題を共有し、対話していくことだと考えています。具体的には、各大学が立地する地域の自治体の首長の皆さんや地域経済界、初等中等教育関係者など、様々なステークホルダーとの対話が必要です。全国組織としては、これまでに全国知事会や日本医師会とも連携を深めるべく対話してきたところですが、それ以外にも経済団体連合会とは「博士人材に関する産学協議会合」において2年間に渡り、博士人材が活躍する社会の実現に向けた取り組みについて議論し、2026年2月に報告書をとりまとめています。この枠組みは国立大学のみにとどまらず、私立大学や公立大学も含めた大学全体と産業界との議論の場となりました。

これからの国立大学〜将来像実現に向けて

国立大学協会としては、2025年3月に「わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像」をとりまとめて発表していますが、これを受けて10月には「将来像実現のための国立大学システム検討WG」を設置して、博士を中心とする人材育成、デジタル技術を活用した教育連携、そして地方創生について具体的なアクションの立案を急ピッチで進めています。2026年6月の通常総会では実際に何を行っていくかを決定したいと考えています。

全国各地域に広がる多様な大学群を擁する国立大学が、システムとして日本そして世界のウェルビーイングに貢献していく、その在り方に是非ご期待いただきたいと思います。

藤井輝夫

1993年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・博士(工学)、同生産技術研究所や理化学研究所での勤務を経て、2007年東京大学生産技術研究所教授、2015年同所長。2018年東京大学大学執行役・副学長、2019年同理事・副学長を務め、2021年同総長に就任。

藤井輝夫

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~藤井総長のお気に入り~

大学時代はダイビングサークルに入り、スキューバダイビングで離島の海に潜っていました。
バンドサークル「東大音感」にも所属し、ボーカルやギターを担当していました。

※本記事に掲載している情報は、2026年5月時点のものです。

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