会長

会長挨拶

会長 永田 恭介(筑波大学長)

国際情勢の不安定化や世界的な気候変動、断続的な物価高騰など、社会は不安と共に新たな局面を迎えています。国立大学は、それぞれが特色を有する86大学で成り立っており、創設以来、世界最高水準の教育・研究の実施や重要な学問分野の継承・発展、全国的な高等教育の機会均等の確保、グローバル人材の育成といった役割を担ってきました。 約6万人の教員は、約58万人の学部生・大学院生の教育を担うとともに、多種多様な研究を展開しています。国立大学が有する「知の資産」としての多様な学術知は、SDGsの実現、グリーン・リカバリー、カーボンニュートラルの推進をはじめとする地球規模の課題を解決するとともに、災害や感染症等に対応する高度にレジリエントで持続可能かつインクルーシブな社会を実現するための大きな力となります。

 

全ての都道府県に置かれている国立大学は、イノベーションの創出や優れた人材育成を通じて各地方(地域)の活性化の中核を担ってきました。国立大学は、各地方(地域)の文化・社会・経済を支える拠点であり、地方(地域)の産業、医療、福祉、教育などに責務を負っていることを自覚しています。人口減少や産業の知識集約型へのパラダイムシフトを背景に地方創生が我が国の重要な課題となる中、近年一層高まる国立大学に対する期待に応えるべきだと考えています。加えて、国立大学はどこにあっても地域の国際社会への窓口であり、人材育成を通じた息の長いソフト外交を支え、国際ステージにおける研究教育インテグリティの確立を先導するなど、普遍的価値を念頭に、安心・安全な世界の在り方にも貢献するとともに、コロナ禍で大幅に減少した学生、研究者の国際交流を活発化させてまいります。

 

我が国の研究力や国際競争力の低下が叫ばれて久しいなか、研究力の底上げはもはや大学の努力だけでは限界があり、大規模な財政支援や税制改正、規制緩和など、国レベルでの対応を要する段階にきています。政府においては10兆円規模の大学ファンド制度を創設するとともに、一部基金化を含め約2,000億円規模の「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」が設けられました。この両制度は、これまでに類をみないプロジェクトであり、車の両輪のごとく、我が国の大学の研究力及び国際競争力を飛躍的に強化させるものと認識しています。これらの取組に寄せられる皆様の大きな期待を背負い、国立大学は両制度を有効に活用して国際的レベルの研究や特色ある研究を推進してまいります。

 

また、デジタル技術を駆使した教育・研究・社会貢献の機能強化を図り、卓越した教育・研究力を基盤として、地域や社会が求める、わが国を牽引する人材を育成してまいります。様々な地域・社会の発展とそこに住む国民一人ひとりのウェルビーイングの向上に貢献するとともに、知の循環と社会への還流を生み出し、コロナ新時代の新たな価値の創造と新しい社会基盤の構築を先導する役割を果たしていきます。国立大学協会では、こうした自律的な取組を社会に向けて積極的に情報発信し、みなさまのご期待に応えられるよう努力してまいります。関係各位には、国立大学及び国立大学協会に対し引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。